キャリアビジョンの有無で、学びの伸びしろは変わる。

 

山本教育長豊島 本学の全学共通教育には、「鳥取学」や「鳥取大学を知る」といった授業があります。毎回違う講師が教壇に立つのですが、「鳥取学」では平井伸治鳥取県知事や前知事の片山善博さんらを招いてそれぞれの立場から鳥取県について講義をしていただいています。「鳥取大学を知る」では私をはじめ本学の教員が、鳥取大学の歴史、各学部の研究内容、教育環境や卒業生の姿などを教えます。案外人気で、本学の学生は8割が県外出身者ですから「初めて聞いた」「鳥取大学はそんなに立派な大学だったのか」というようなことを言い始める。乾燥地研究センターの施設だけを見て、彼らは「鳥取砂丘があったからできたのだろう」ぐらいにしか思っていないわけで、先人がどんなに大変な苦労をし、そしてその研究成果がいかに世界に貢献しているかということを知らしめると、非常に興味を持って聞いてくれる。鳥取と鳥取大学に誇りを持ってもらいたいと、一生懸命に教えています。


山本
 
似たような話が高校教育にもあります。鳥取中央育英高校が今、地域に出かけていって地域の課題を探求する学習をしているんです。その開講に当たり、鳥取県の素晴らしさや取り組みについて平井知事に話をしてもらいました。先程の学長の話と同じで、生徒は「鳥取ってこんなにすごいところだったんだ」と気付いて、県外の大学に進学しようと思っていたけど鳥取県内で学ぶことにした、と思い返す子もいるそうです。


豊島
 そういう教育を進めることにより、鳥取県をなんとかしてやろうという気持ちの人が増える。そうした生徒を上手に育て上げ、鳥取を良くしていくという取り組みが大切ですよね。一方では、優秀な方が中央へ出ていって活躍されるのもいとわない。もちろんU・J・Iターンするもよし。そういう手厚いケアのできる、懐の深い県になることを願っています。そういった観点から大学入試、高校入試の現状をどんなふうに見ておられますか。


山本
 「入試をクリアする」ことだけに焦点が当たった学びをしていると、そこから先の伸びしろがすごく少ない。最初から固まらないにしても、ある程度将来のビジョンを持っているのといないのとでは、入学してからの学びが随分違うのではないでしょうか。高校側も、生徒を大学に入れることが最大の主眼になってしまっているので、もう少しキャリアビジョンを持たせるような要素も入れていかないといけないと思っています。


豊島
 
大変な時代になりましたね。私は学生時代にキャリアビジョンなんか持っていなかったですよ(笑)。大きなビジョンを掲げることは良いのですが、一朝一夕に達成することはできない。真面目にこつこつと学びを蓄積していくことが大事だと、私は学生たちに言うんですけれどもね。


山本
 私が子どもたちによく話すのは、イチロー選手のこと。彼はいきなり大リーガーになったわけではなく、人よりも1回でも多く素振りをするとか、毎日こつこつと練習を重ねてきたことで夢を叶えたのだと話すのです。


豊島
 その辺が、今の日本人が忘れているところではないでしょうか。アメリカンドリームのような気持ちだけを情報としてもらっていて、達成するには日々の地道な努力が必要なのだということを忘れている気がします。


豊島学長山本
 ビジョンを持つということでいえば、鳥取大学に期待することの一つとして、鳥取県の子どもたちのちょっと先のモデルを鳥大生が担ってくれるとありがたいなと思っています。これまでも教員同士の連携、高校への学びのサポートをしていただいているのですが、また違う形で、例えば小中高生と鳥大生が一緒に活動するという場面を増やしていけたら、「あんなふうになりたい」という具体的な目標を描けるのではないかと。特に高校生は、自分たちと年の近い大学生のことをよく見ていますから。


豊島
 
鳥取県の教育レベルを上げる意味でもできるだけ学生に地域へ出ていってもらい、小中高生と一緒にいろいろな活動ができたら良いなと、私も思っているところです。本学のオープンキャンパスでも、教員が前面に出るのではなく学生らが説明に立つことによって、受験生や保護者に対して「鳥大生ってこういう感じなんだ」という自然なモデルになって、非常に良いと感じています。

 

対談


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