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工学研究科の村田教授らが自動応答システム作成に役立つ情報要約技術を開発

2017年12月11日

自動応答システム作成に役立つ情報要約技術を開発
~コールセンター用AIチャットボットシステムの運用へ~

概要

 鳥取大学大学院工学研究科の村田真樹教授はダットジャパン株式会社(本社:北海道札幌市)と共同で、自動応答システム作成に役立つ情報要約技術を開発し、11月下旬に特許を共同出願しました。
 現在、コールセンターの業務効率化を支援するため、オペレータに代わって電話の応答をするAIチャットボットの開発が望まれています。村田教授らはこの開発にあたり、対話のデータから、低コストで各場面の学習データを収集することができる技術を構築しました。

共同研究の背景と内容

 近年インターネットを利用したチャットボットが様々な場面で活用されています。コールセンターの電話応答もその一例です。コールセンターの対応には質問と回答という二つの要素があり、一般的には複数の問答により成立します。この対応をAIに行わせるためには、質問と回答が対となるデータを膨大に用意し、AIに学習させる必要があります。
 従来の一般的な要約技術では要約ファイルが1つしか生成できないため、電話応答の複数の場面に対応する質問と回答が対の形となったAIの学習用ローデータを自動生成することが困難でした。そのため、人力でローデータを成形することが必要となり、相当な時間と労力を要するものでした。
 一方、村田教授が以前より研究開発を行ってきた自然言語処理技術[村田AIエンジン(仮称)]は、最近話題の深層学習(ディープラーニング)を利用し、テキストファイルから予め決めた項目に対する複数の要約を生成及び逐次学習を行うことが可能であり、さらに、事前知識なしに予め決めていない項目に対しても複数の要約を生成することができます。
 今回、コールセンターの運用及びコールセンター系システムの開発・販売を行うダットジャパン株式会社(建設系ソフトウェアの開発が主)が持つノウハウと、同エンジンを活用した共同開発を行うことで、対話データから、低コストに各場面の学習データを収集することができる技術を構築しました(図1)。それにより、電話応答の複数の場面に対応する質問と回答の対のデータとして学習用ローデータを自動生成することが容易になり、飛躍的にAIの学習による成長速度、精度が向上しました。この技術を生かすことで、今までにないAIチャットボットエンジンとなり、より人間の対応に近い自動応答が可能となります。

今後の展開

 本技術を利用したAIチャットボットエンジンの実装を、同社と共同で進めています。平成30年3月に一次品の完成予定としており、同社のコールセンターでテスト及びカスタマイズを行い、平成31年4月からは、他コールセンターへの販売も行う予定です。
 コールセンターの市場規模は全体でおおよそ5,000億円となっており、まずはその0.2%となる10億円の売上高を目指しています。 

イメージ図
図1.概略図

※参考情報 ダットジャパン株式会社HP

用語解説

AI

Artificial Intelligenceの略で人工知能のこと。

チャットボット

チャットボット(chatbot)とは、「チャット」と「ボット」を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のこと。また、「チャット」はインターネットを利用したリアルタイムコミュニケーションのことであり、「ボット」は「ロボット」の略である。

深層学習(ディープラーニング)

ニューラルネットワークの階層を増やすことで、格段に性能を向上させた学習アルゴリズム。自然言語、音声、画像の処理における性能向上に役立っている。囲碁のチャンピオンを破るような囲碁ソフトも、深層学習を利用している。  

ローデータ

Raw Date。何も処理をしていない元のままのデータのこと。