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発達障害をもつ子どもの不安が日本においても高いことを確認

2019年10月29日

 本学教育支援・国際交流推進機構の石本雄真准教授らの共同研究グループは、国内の6~12歳の発達障害をもつ子どもを対象に、これまで国内では定量化されていなかった不安の高さを調査しました。その結果、発達障害をもつ子どもはもたない子どもに比べ顕著に不安が高く、とりわけ自閉症スペクトラム障害(ASD)をもつ子どもにおいて特に不安が高いことを確認しました。本研究成果は、6月2日に心理学雑誌「Journal of Autism and Developmental Disorders」に掲載されました。

研究背景

 自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、(限局性)学習障害(LD)、知的能力障害(ID)といった神経発達障害(以下、発達障害)をもつ子どもは、高い不安をもつこと(いろいろなことを怖がる、心配が多い)が海外の研究において明らかになっています。高い不安は、人と関わる機会を減らしたり新しいことに挑戦する機会を少なくしたりし、さまざまな学習の機会を奪うだけではなく、不登校などの二次的な問題にもつながります。また、不安の高さにより人と関わる機会を失うことで、発達障害の特性から生じるコミュニケーションの苦手さを補うことができず、そのコミュニケーションの苦手さはさらに不安を高めるという悪循環になることも指摘されています。
 しかしながら、これまで日本の発達障害をもつ子どもを対象に、日常的な生活場面での不安の高さを調査したものはなく、発達障害をもつ子どもの不安の高さはあまり理解されていませんでした。

研究概要

 石本准教授らは、近年大きな広がりをみせている放課後等デイサービスを利用する子どもを対象に調査を行い、日本における発達障害をもつ子どもの不安の高さを調査しました。調査の結果、日本においても一般の子どもに比べて発達障害をもつ子どもの不安は高く、統計的に大きな得点差がみられることがわかりました(図1)。また、特にASDをもつ子どもではさらに不安が高いこともわかりました(図2)。
 高い不安だけではなく行動的な問題(多動や友人関係など)でも、発達障害をもつ子どもはもたない子どもに比べてより困難さを経験していることがわかりました(図3、4)。

今後の展望

 発達障害をもつ子どもの不安の高さは、さまざまな問題につながることが知られていますが、日本における発達障害をもつ子どもへの支援は学習の問題や行動の問題を対象としたものが多く、不安の高さに焦点をあてたものはあまりみられません。私たちの研究では、不安の高さをはじめとする気持ちの問題を対象とした支援プログラムを開発し、実践、検証しています。
 今後はこのようなプログラム活用の推進を含め、発達障害をもつ子どもの不安に対応する支援や高い不安から生じる問題に対応する支援を行っていくことが求められます。また、発達障害をもつ子どもが高い不安によって悩まされていることが広く知られ、不安への支援が必要であるという理解が深まることを期待しています。

研究助成

 本研究成果は、日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤研究(C))15K04160「教員・指導員による発達障害児の不安へのCBTを用いた支援」の支援により得られたものです。

掲載論文

  • タイトル:Anxiety Levels of Children with Developmental Disorders in Japan: Based on Reports Provided by Parents
  • 著者:Yuma Ishimoto, Takahiro Yamane, & Yuki Matsumoto
  • 掲載誌名:Journal of Autism and Developmental Disorders、DOI:10.1007/s10803-019-04092-z

研究グループ

石本雄真(鳥取大学)、松本有貴(徳島文理大学)、山根隆宏(神戸大学)

参考図


図1.発達障害をもつ子どもともたない子どもの不安の比較

図2.発達障害をもつ子どもの中でASDの診断の有無による不安の比較

図3.発達障害をもつ子どもともたない子どもの行動的な問題の比較(左:女子、右:男子)

※詳細はプレスリリース(PDF 199KB)をご覧ください。