ハチに擬態した新種のガ「ナシコスカシバ」
〜きめ細かな調査で未知の害虫を発見、大学と試験場のタッグで速やかに生態解明〜
概要
農学部の中秀司准教授らの研究グループが、京都府病害虫防除所、京都府農林水産技術センター丹後農業研究所との共同研究により、京都府京丹後市内でナシの樹皮下を加害する「謎の芋虫」の正体とその生態を解明しました。
謎の芋虫は、成虫がハチに擬態したスカシバガ科コスカシバ属の新種であることが明らかとなり、幼虫がナシの樹皮下を加害することから「ナシコスカシバ(学名: Synanthedon nashivora)」と命名しました。ハチに擬態した姿と、腹部を裏側から見たときに目立つ太く白い帯が特徴で、既知のどの種とも明瞭に区別できる特徴を備えています。
スカシバガ科は国内に約50種を擁するガの仲間で、成虫がハチに擬態していることで知られています。また、サクラ・ウメ・モモなどの大害虫コスカシバや、ブドウの重要害虫クビアカスカシバなど多くの果樹害虫を含んでいます。コスカシバ属はスカシバガ科の中で最もよく調査されている分類群で、本州の平地の、しかもナシ園から新種が発見されたのは極めて異例なことです。「ナシコスカシバ」の新種記載に関する論文は、日本蛾類学会が発行する国内外のガ類の分類や系統・進化を扱う学会誌『Tinea』に掲載されました。
※詳細は
プレスリリース(PDF 411KB)をご覧ください。

写真1 ナシコスカシバ雄成虫(左: 表面、右: 裏面)

写真2 ナシの葉に静止するナシコスカシバ雌成虫(京丹後市にて撮影)
掲載論文
- タイトル:A new species of the genus Synanthedon [Hübner, 1819] (Lepidoptera: Sesiidae) from Japan
- 著者:NAKA Hideshi, TOKUMARU Susumu, KUKIZAKI Takahiro, YANO Takahiro, YAMAGISHI Mizuki, MATSUI Yuki
- 掲載誌名:Tinea 25 (Suppl. 1): 131-137