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稲葉助教、松浦教授らがタンパク質ナノチューブ「微小管」の中にタンパク質を導入することに初めて成功
タンパク質ナノチューブ「微小管」の中にタンパク質を導入することに初めて成功
―タンパク質の裏打ちによって微小管が安定化!―
ポイント
- タンパク質ナノチューブである微小管の内部に結合するペプチドを用いて、微小管の中に緑色蛍光タンパク質GFPを導入することに成功
- GFPが内部に結合することで微小管が大幅に剛直かつ安定となり、モータータンパク質を固定した基板上での運動速度が増加
- 本手法により様々なタンパク質を微小管に内包することが可能となり、微小管の性質を改変した「人工微小管」としての材料応用や、微小管を標的とした抗がん剤開発などの細胞機能制御につながると期待される
概要
鳥取大学工学部化学バイオ系学科の稲葉央助教、松浦和則教授らの研究グループは、同大学農学部の岩崎崇准教授、北海道大学大学院理学研究院の角五彰准教授、佐田和己教授らの研究グループとの共同研究により、細胞骨格の一種であるタンパク質ナノチューブ状集合体「微小管」の中に緑色蛍光タンパク質(GFP)を導入することに世界で初めて成功しました(図)。
これまでに、本研究グループは微小管内部に結合するTau由来ペプチド(TP)の開発に成功しています。本研究では、TPをGFPに連結することで微小管内部へのGFPの導入を達成しました。興味深いことに、GFPが内部に結合した微小管は剛直で安定なチューブ構造を形成し、モータータンパク質を固定した基板上における運動速度の増加が見られました。これは、あたかも「裏打ち」のようにタンパク質が内部に結合して安定化する天然の微小管を人工的に再現したといえます。本研究は微小管内部にタンパク質を導入した初めての例であり、微小管を理解し、その構造や機能を変える全く新しい手法になると期待されます。
本研究成果は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(17K14517、19K15699)、公益財団法人稲盛財団、コニカミノルタ科学技術振興財団の支援により得られたもので、2019年6月26日に英国王立化学会が発行する「Chemical Communications」オンライン版に掲載されました。
※詳細はプレスリリース(PDF 453KB)をご覧ください。
図.本研究の概念図。GFPにTau由来ペプチド(TP)を連結することで、微小管への内包に成功した。GFPが内部に結合した微小管は、その剛直性や安定性、運動速度が大きく増加した。
今後の展開
本研究では、ペプチドを用いて微小管内部にタンパク質を導入することに成功し、タンパク質が裏打ちする形で微小管を大きく安定化することを見出しました。本手法は今後様々なタンパク質の内包に応用可能だと考えられ、微小管を標的とした抗がん剤開発などの細胞機能制御や、構造が安定化された「人工微小管」として分子デバイスや分子ロボット作製のための新たなツールとしての利用が期待されます。
論文タイトルと著者
- タイトル:Stabilization of Microtubules by Encapsulation of GFP Using Tau-Derived Peptide
- 著者:Hiroshi Inaba,* Takahisa Yamamoto, Takashi Iwasaki, Arif Md. Rashedul Kabir, Akira Kakugo, Kazuki Sada, and Kazunori Matsuura*
- 掲載誌:Chemical Communications
用語解説
Tau由来ペプチドTP
本研究グループによって開発された、微小管内部に結合するペプチド(CGGGKKHVPGGGSVQIVYKPVDL)。微小管関連タンパク質の一種であるTauから設計され、微小管内部に相当するチューブリンのポケットに結合する。今回はこの配列をGFPに連結することで微小管へのGFPの内包を行った。
モータータンパク質
アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解により生じる化学エネルギーを運動に変換するタンパク質の総称。細胞内における物質輸送や細胞分裂などに重要な役割を果たしている。微小管上を動くキネシンやダイニンなどが知られている。キネシンを固定した基板上では微小管が一方向に運動することが知られており、今回はGFP内包微小管の運動速度を解析した。