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【研究成果】松浦教授らがエンベロープ型ウイルスを模倣した脂質修飾ペプチドナノカプセルを『合成分子のみから創る』ことに成功
エンベロープ型ウイルスを模倣した脂質修飾ペプチドナノカプセルを『合成分子のみから創る』ことに世界で初めて成功!
概要
鳥取大学工学部化学バイオ系学科の松浦和則教授と大学院生の古川寛人さんらの研究グループは、京都大学大学院工学研究科の佐々木善浩准教授・秋吉一成教授らの研究グループとの共同研究により、エンベロープ型ウイルスを模倣した脂質修飾ペプチドナノカプセルを「合成分子のみから創る」ことに世界で初めて成功しました(図)。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスのような「エンベロープ型ウイルス」は、核酸とタンパク質からなる複合体を脂質二分子膜が覆った複雑な構造をとっていますが、これまでそのような構造を化学的に創ることはできませんでした。本研究では、負電荷を有するウイルス由来ペプチドの集合体と正電荷を有する脂質からなるリポソームを複合化させることで、エンベロープ型ウイルスのような脂質修飾ペプチドナノカプセルを合成分子のみから創ることに成功しました。また、この脂質修飾ペプチドナノカプセルは、ペプチド集合体のみや、リポソームのみの場合と比較して、粒径が均一で安定性も高いことが示されました。本成果により、薬物送達材料やウイルスに対するワクチン開発のための材料としての応用が期待されます。
本研究成果は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(18H02089)の支援により得られたもので、2020年5月28日に英国王立化学会が発行する「Chemical Communications」オンライン版に掲載されました。
※詳細はプレスリリース(PDF 638KB)をご覧ください。
図.ウイルス由来β-アニュラスペプチドの自己集合により形成される負電荷を有するペプチドナノカプセルを、正電荷を有するリポソームで被覆することで「脂質修飾ペプチドナノカプセル」を構築した。
今後の展開
本研究では、エンベロープ型ウイルスを模倣して、粒径が均一で安定な脂質被覆ペプチドナノカプセルを合成分子のみから創ることに成功しました。今後、様々な膜タンパク質(例えば、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン等)を脂質二分子膜に搭載することで、「ウイルスレプリカ」を合成し、薬物送達材料・ウイルス感染研究のモデル材料・ウイルスに対するワクチン開発のための材料としての応用を目指して研究を展開していきます。
論文タイトルと著者
- タイトル:Enveloped Artificial Viral Capsids Self-assembled from Anionic β-Annulus Peptide and Cationic Lipid Bilayer
- 著者:Hiroto Furukawa, Hiroshi Inaba, Fumihito Inoue, Yoshihiro Sasaki, Kazunari Akiyoshi, and Kazunori Matsuura*
- 掲載誌:Chemical Communications
用語解説
リポソーム
リン脂質が水中で自己集合して形成される数10nm~数μmの袋状分子集合体で、細胞膜のように脂質同士が二分子向かい合った膜(脂質二分子膜)構造をとり、内水相を有している。脂質の有機溶媒溶液から調製される膜を超音波処理するか、水和させる方法でリポソームを調製することができる。