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辻本教授らがスーダンでは温暖化に対応するために現在主力の高温耐性品種コムギ比で年あたり2.7%の収量増加が必要であることを明らかにしました。
世界で最も暑いコムギ栽培地域・スーダンでは温暖化に対応するために高温耐性品種コムギは
現在の主力品種の収量に対して年あたり2.7%の増加が必要
ポイント
1. 鳥取大学乾燥地研究センターでは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)およびスーダン農業研究機構と共同で、2050 年の温暖化に対応するために必要なコムギ高温耐性品種の開発速度をスーダンを例に明らかにしました。
2. 気温が上昇していく中でコムギの収量を現在と同じ水準に維持するためには、高温耐性品種の収量が年あたり0.2%~2.7%増加する必要があることが分かりました。
3. スーダンは世界で最も暑いコムギ栽培地域であり、本研究で得られた知見は世界のコムギ育種研究機関が高温耐性品種の開発目標を決めるうえで役立ちます。
概要
アフリカ北東部スーダンのコムギ栽培環境は世界で最も高温とされています1)。スーダンでは気温が比較的、低くなる11 月から翌年3 月にかけてコムギが栽培されますが、コムギの生育期間中の日平均気温は17℃~35℃程度であり、時に36℃を上回ることもあります。栽培されるコムギは高温に耐性がある品種であり、ナイル河の潤沢な水資源を利用して十分に灌漑されていますが、現地の圃場観測データからは、生育期間の平均気温が高い年には収量が減少する傾向が示されています(図1)。このため、温暖化が進行すると、将来、スーダンのコムギ収量は減少すると懸念されています。※詳細はプレスリリース(799KB)をご覧ください。
今後の展望
スーダンではコムギの消費量が年々増加しています。2000 年には110 万トンだったコムギ消費量は2017 年には300 万トンに達しました。こうした消費量の急増は、ソルガムやミレットなどスーダンで生産されている他の穀物では見られません。スーダンの人口は2050 年には8,000 万人に達すると予測されています(2017 年は3,300 万人)。これに伴い、コムギ需要は現在の約2 倍の570万トンに増加する見通しです。スーダンのコムギ自給率は現在、約20%であり、国内のコムギ生産が予測される需要増加と温暖化に対応するためには多くの挑戦が必要です。この挑戦にあたり、より高温耐性の高い、新たなコムギ品種は有望な方策です。
その他
本研究は以下の事業の支援を受けて実施しました。 鳥取大学乾燥地研究センター共同研究(課題番号:30F2001、02F2001)
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)、 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)/ 独立行政法人 国際協力機構(JICA)(課題番号:JPMJSA1805) この研究成果は食品関連研究分野の国際科学誌「Nature Food」に掲載されました。
論文タイトルと著者
タイトル:Challenges in the world's hottest wheat-producing environments of Sudan related to rising
temperatures and increasing demand
著者:Toshichika Iizumi, Imad-Eldin A. Ali-Babiker, Mitsuru Tsubo, Izzat S. A. Tahir, Yasunori Kurosaki,
Wonsik Kim, Yasir S. A. Gorafi, Amani A. M. Idris, and Hisashi Tsujimoto
掲載誌:Nature Food
用語解説
1) 国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)の栽培環境区分(ME:Mega-Environment)によると、スーダンのコムギ栽培地域の大部分はME5 に分類されます。ドンゴラなどスーダン北部の一部はME1 に分類されます。全部で12 種類あるME のうちME5 は最も気温が高いです。最も涼しい四半期(連続した3 カ月間)の月平均日最低気温が11℃より高く、16℃より低い場合にME5 と分類されます。ME1 は、最も涼しい四半期の月平均日最低気温が3℃より高く、11℃より低い場合です。
2) 工業化以前(1850~1900 年)と比較した今世紀半ば(2046~2065 年)の平均のコムギ生育期間気温。コムギ生育期間は11 月~3 月とした。