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大学院生らが新規オリゴ糖「シクロカサオドリン」の合成に成功
鳥取生まれの新しいオリゴ糖「シクロカサオドリン」
―シクロデキストリンの構成糖をグルコサミンで置き換えた環状グルコサミンの合成に世界で初めて成功-
本学工学部と株式会社コガネイ(東京都小金井市)の研究グループはシクロデキストリン*1の構成糖であるグルコースをグルコサミンで置き換えた新しい環状オリゴ糖の自動合成に世界で初めて成功しました。
これまでに、当研究グループはワンポッドで糖伸長が可能な化学合成法AEA(Automated Electrochemical Assembly:液相電解自動合成)法を応用し、オリゴ糖の合成工程の自動化装置を開発、オリゴグルコサミンを中心とした高純度な糖鎖のmg~gオーダー製造を実現しました。
今回、新たなプロセスとして電気化学的な酸化反応(電解酸化)を組み込んだ合成プロセスePIC(Electrochemical Polyglycosylation-Isomerization-Cyclization Process:電気化学グリコシル化重合―異性化ー環化プロセス)を用い、環状グルコサミン6糖、7糖の自動合成を実現しました。ePICプロセスではグルコサミンをつなげる・曲げる・環化するという3工程を1つの反応器で連続的に行うため、途中で生じる中間体の単離・精製を省略できるというメリットがあります。また、電気エネルギーを主とした電気化学的な反応のため、危険な試薬を用いる量が少なく、高い反応温度も必要としません。
今回合成した環状オリゴ糖は鳥取県東部に伝わる「因幡の傘踊り」のしゃんしゃん傘に形が似ていることから、「シクロカサオドリン」と名付けました。本研究成果は、2022年6月24日に英国王立化学会Chemical Communications誌でオンライン公開されました。
環状グルコサミン「シクロカサオドリン」は、シクロデキストリンが持つ薬剤包接などの効果に加え、エタノールなどへの溶解度の改善、生体内での構造安定性の向上などの効果が期待されます。
※プレスリリースはこちら
今後の展開
・ドラッグデリバリーやイメージングなどの生体内での分子送達
・殺菌剤・殺虫剤(酵素阻害剤としての機能を想定)
・シクロデキストリンの代替・機能向上(安定性や包接能の違いを利用)
などの用途を中心に、広く連携を募り用途開発を進めます。また、新たな構成糖(例えば、ガラクトサミンやマンノサミンなど)による環状オリゴ糖の開発も推進します。
謝辞
しゃんしゃん傘の画像をご提供頂いた鳥取しゃんしゃん祭り振興会に御礼申し上げます。
論文
タイトル:Synthesis of Cyclic α-1,4-Oligo-N-acetylglucosamine 'Cyclokasaodorin' via One-Pot Electrochemical Polyglycosylation-Isomerization-Cyclization Process(ワンポット電解グリコシル化重合-異性化-環化プロセスを用いた環状α-1,4-オリゴ-N-アセチルグルコサミン合成)
著者:遠藤大史(鳥取大学工学部)、越智雅治(鳥取大学工学部)、ラハマン エムディアザドゥル(鳥取大学工学部)、濱多智昭(株式会社コガネイ)、川野貴宏(株式会社コガネイ)、野上敏材(鳥取大学工学部)
掲載誌:Chemical Communications, 46巻(2022年)
URL:https://doi.org/10.1039/d2cc02287g
研究費:科学研究費補助金 基盤研究(C)「環状オリゴ糖合成の効率化と機能開拓」(JP19K05714)
用語解説
*1 グルコースが環状につながったオリゴ糖。天然に存在するのは6つ以上のグルコースからなるシクロデキストリンですが、世界最小の3つのグルコースからなるシクロデキストリンは山田ら(関西学院大)によって化学合成されています。
*2 「シクロカサオドリン」の名称は西沢ら(徳島文理大)によって化学合成され、「阿波踊り」に因んで名づけられた「シクロアワオドリン」に対するオマージュです。